2009年07月11日

しくじった

オーストラリアで暮らす姪っ子のために、オリジナル絵本をつくってみた。
絵のかわりに猫の写真を入れて。
日本を恋しがる椿の寂しさが紛れるといいな、と思ったのだ。

が。

どうやら、しくじった。

私には元気な声で「ありがとう」って電話してきたくせに。
布団の中で泣いているらしい。
泣きながら、毎日読んでいるらしい。
・・・・・・・・しくじった。

ごめんよ、椿。
こんどはもっと元気のでるお話を書いてあげるから。

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昔むかしあるところに、
椿と梅という2人の女の子と
アジャリとサンジという2匹の猫がいました。
女の子と猫はとても仲良しで毎日いっしょに遊んでいました。

けれどある日、椿と梅は突然いなくなりました。
 「オーストラリアに帰ったんだよ」
と言われましたが、子猫のサンジには何のことだか分りません。
 「オーストラリアっておいしいのかな?」
と思いながら待っていました。
けれど椿も梅も帰ってきません。
いつまで待っても帰ってきません。
夜になって朝になって、それでも2人の女の子は帰ってきませんででした。

猫たちは寂しくてたまりません。
とうとうサンジが外に飛び出していきました。
 「駄目だよ!外に出ちゃいけないって言われてるじゃないか」
アジャリが叱ります。
でも叱られたってサンジは平気でした。
 「ぼく、椿と梅を探しにいく!」
サンジはどんどん歩いていきました。
きっとスーパーにいるんだろうと思っていたのです。
スーパーに『オーストラリア』を買いにいったんだ。
アジャリは慌ててあとを追いました。
 「椿たちはオーストラリアにいるんだよ」
それで分りました。
オーストラリアは食べ物ではなく場所の名前なのです。
 「じゃあぼく、オーストラリアに行く!」
アジャリは大人でかしこくて、そしてやさしい猫でした。
サンジのことも椿と梅のことも大好きでした。
それでしぶしぶ言いました。
 「じゃあ、一緒にいこう」
こうして2匹の猫はオーストラリアに行くことに決めたのです。

アジャリはとても物知りでした。
人の話をよく聞いていましたから、オーストラリアへの行きかただって知っていました。
 「電車にのってバスにのって
  空港へいって飛行機にのるんだよ」
でもサンジは
 「それもみんな食べられるのかな」
と思って聞いていました。

猫たちはまず駅へ行って電車に乗りました。
お客さんが少なかったので乗るのはかんたんでしたが、
電車が動きだすと大変でした。
 がたんごとん
 がたんごとん
電車が大きく揺れるのでびっくりしました。
アジャリは
 「地震がきた!」
と逃げ出そうとしました。
電車の床はつるつるなので、サンジはすべったりころがったり、
でんぐりがえりをしてお尻をぶつけたりしました。
ようやく電車を降りたときにはホッとしました。

次は、バスです。
2匹の猫は空港行きのバスに乗り込みました。
といっても人間とおなじ座席には座れませんから
運転手さんに見つからないよう、
スーツケースを入れておく倉庫のようなところに忍び込みました。
ところが、倉庫の中にはいると、黄色い意地悪そうな目がピカリ!と光って
 「出ていけ!」
と言いました。
 「これは俺様のバスだぞ!」
声の主はドブネズミでした。
サンジとおなじくらい大きなネズミで、鋭い歯にはばいきんがたくさんついています。
あの歯で噛まれたら、重い病気になってしまうでしょう。
ドブネズミは小さなサンジに襲いかかりました。
 「かまれる!」
と思ったとき、
 「フギャア!」
アジャリが怒った声をあげました。
そしてパッと飛び上がり、
 「ねこパーンチ!」
アジャリは大きくて強い猫ですから、
ドブネズミはふっとばされてしりもちをつきました。
すぐに起き上がってまた噛みつこうとしたので
アジャリはもう2回、ねこパンチをしました。
サンジもちょっとだけ、ドブネズミのしっぽをひっかきました。
すると、いじわるなドブネズミは逃げていきました。
そのあと2匹の猫は安心して、丸くなりました。
やがてバスが動きだしましたが、ふたりともぐっすりと眠っていたのでバスが揺れていることにも気がつきませんでした。

 「起きて!空港に着いたみたいだよ」
アジャリが鼻をくんくんさせてサンジを起こしました。
倉庫のドアが開いたのでふたりはスーツケースといっしょにバスを降りました。
 「わっ!猫だ!」
荷物係のおじさんはびっくり。
 「ちょっと待ちなさい!
  猫は飛行機に乗ってはいけないんだよ!」
おじさんが追いかけてくるので猫たちは走って逃げました。

おじさんに見つかったので空港の建物には入れません。
アジャリとサンジは建物の裏側にぐるっとまわりました。
そこは広い広い場所で、飛行機がたくさんとまっていました。
 「やった、飛行機だ!
  これでオーストラリアに行けるぞ」
とアジャリは思いました。
けれどサンジは
 「なんて大きな鳥なんだろう。
  飛行機は鳥の王様に違いない」
と思いました。

次はオーストラリアへ行く飛行機を探さなくてはなりません。
 「ジェットスターってどれだろう?」
飛行機はたくさんありました。
どれがジェットスターなのか、アジャリにはさっぱり分りませんでした。
教えてくれそうな親切な人も見当たりません。
けれどサンジは知っていました。
 「オレンジ色でお星様の絵がかいてあるやつだよ!
  ぼくテレビのCMで見たことあるもん!」

とうとう見つかりました。
オレンジ色でお星様のついた飛行機、ジェットスターです。
オーストラリア行きの飛行機です。
これに乗れば、椿と梅に会えるのです。
わくわくしてきました。
猫たちはもう、2人の女の子たちに会いたくてたまりません。
 「つばきつばきつばき」
 「うめちゃんうめちゃんうめちゃん」
そう言いながら、いつのまにか走り出していました。
嬉しくて嬉しくて、ヒゲとしっぽをピンと立てて走りました。

あとちょっとで飛行機にたどり着く、と思ったその時です。
飛行機が動きだしました。
大きな大きなタイヤと大きな大きな翼がだんだん近づいてきます。
 「こっちにむかってくるよ!」
 「あぶない!ひかれちゃう!」
アジャリとサンジは、いちもくさんに逃げました。
そして車の下にもぐりこみました。

お星様の絵のついた飛行機は車のすぐそばをとおり
それからナナメになって空へ飛んでいきました。

飛行機が空に上がるとき、とても大きな音がしました。
アジャリもサンジも聞いたことがないくらい、ものすごい音でした。
怖くて怖くてたまりませんでした。
アジャリは
 「病院で注射したときより怖い。
  ああ、お家に帰っておばあちゃんのおふとんに入りたいよう」
と思いました。
サンジは
 「鳥の王様が怒ったんだ。
  ぼくたち食べられちゃう!
  ああ、お家に帰っておじいちゃんのおふとんに入りたいよう」
と思いました。
ふたりは
 「ニャオン、ニャオン」
と泣きました。
たくさんたくさん泣きました。

アジャリとサンジは両手で耳を押さえたままぶるぶる震えていました。
どのくらい時間がたったでしょう。
突然、ふたりは車の下から引っ張りだされました。
 「こんなところに猫がいるぞ」
人間の手がアジャリとサンジを抱きあげました。
空港の人に見つかってしまったのです。
 「震えているのか?
  怖くない怖くない、もう大丈夫だよ」
空港の人はアジャリとサンジをやさしくなでてくれました。
そしてサンジの首輪に電話番号が書いてあるのを見つけて
おばあちゃんの家に電話をしました。
すぐにおばあちゃんとおじいちゃんが迎えにきてくれました。
 「ダメじゃないか!
  どうして勝手に空港まで来たんだ!」
おじいちゃんは怒りました。
大好きなアジャリとサンジを心配していたから怒ったのです。
 「ぼくたちオーストラリアへ行きたかったんだ」
とアジャリが答えました。
 「椿たちに会いたかったの」
とサンジも言いました。
 「椿にぎゅーってハグしてもらって
  梅ちゃんとセロテープのとりあいっこをしたかったの」
ふたりの女の子のことを考えただけで
アジャリは幸せな気持ちになりましたし、
サンジののどはゴロゴロと音をたてるのでした。
するとおばあちゃんがわらって言いました。
 「大丈夫。
  いっぱいいっぱいご飯を食べて
  いっぱいいっぱい勉強をして
  大きくなったらまた会えるよ」

最近、アジャリとサンジはよく空を見上げています。
それは飛行機が飛んでいった空です。
オーストラリアまでつづいている空です。
大きな空は、椿と梅の頭のうえまでずーっとつながっているのです。
posted by だだ at 19:00| 家族 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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