「ピアノの部屋に飾る絵よ!」
と嬉しそうに言って。
「これで本格的に音楽室らしくなるでしょう?」
・・・音楽室とは名ばかりの、台所の隣の4畳間だ。
ピアノを置いたらいっぱいいっぱい。
台所へ行くには身体を細くしないと通れないような、そんな小さな部屋の壁にたくさんの絵を貼っていったっけ。
忘れもしない。
『クラシック作曲家シリーズ』。
絵を貼りながら母が名前を教えてくれた。
これはベートーベン。ジャジャジャジャーン!の曲をつくった人。
このひとはモーツァルト。天才なのよ。
黒い服の人がドビュッシー。
これはハイドン、シューベルト、リスト、それから
「すごく偉い人。音楽の父よ」
ヨハン・セバスチャン・バッハ。
バッハの顔は、こう。
バッハは偉い。
バッハは凄い。
・・・小さい頃にすりこまれた記憶。
それなのに。
この記事!
ただのいかついオッサンやん!
顔じたいは絵と似てると思う。
でも、あんまりじゃないか?
この正面写真。
この髪の毛の薄さ。
奥さんに
「あなた、ゴロゴロしてるんなら犬の散歩に行ってきてちょうだい。
お風呂掃除も頼むわね」
とか言われてる停年男みたいな悲しげな眼差し。
あああ、私の大バッハが!



